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シストレでの日本株スキャルピングについて考える その0.5

どうも、POIです。

前回の記事では、優待のように資金は減るが得できるような投資手法以外に、資金を増やすための投資手法を行いたいということで長々と考えた結果、 トレードシステムを組んで、auカブコム証券でスキャルピングを行うという方針で進めていくことに決まりました。

そこで個人がシステムでスキャルピングを行う上で、法律や規制に引っ掛からないか気になったため調査しました。

高速取引行為(HFT)

まず初めに気になるのが、金商法の高速取引行為(HFT)規制についてです。
コンピュータの性能向上により、HTFによる先回り取引や株価の急激な乱高下が問題とされていましたが、2017年に法律改正によって、システムで高速取引を行うものは金融庁に届け出をしなければいけないというルールになりました。
ただ、この高速取引というのがどの程度のものを指すなのか明確な基準がわからなかったので調べてみたところ、金商法に具体的な定義が記載されていました。

第一章 第二条 41
この法律において「高速取引行為」とは、次に掲げる行為であつて、当該行為を行うことについての判断が電子情報処理組織により自動的に行われ、かつ、当該判断に基づく当該有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行うために必要な情報の金融商品取引所その他の内閣府令で定める者に対する伝達が、情報通信の技術を利用する方法であつて、当該伝達に通常要する時間を短縮するための方法として内閣府令で定める方法を用いて行われるもの(その内容等を勘案し、投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)をいう。
一 有価証券の売買又は市場デリバティブ取引
二 前号に掲げる行為の委託
三 前号に掲げるもののほか、第一号に掲げる行為に係る行為であつて、前二号に掲げる行為に準ずるものとして政令で定めるもの

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)より

これを細かく見ていくと、
「次に掲げる行為であつて」で示されている一に「有価証券の売買」という記載があるため、今回やろうとしている日本株の売買は対象になります。

「当該行為を行うことについての判断が電子情報処理組織により自動的に行われ」、これはシステムがどのタイミングでどの注文を出すか判断を下すということなので、これも今回やろうとしていることの条件に当てはまりいます。

「当該判断に基づく当該有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行うために必要な情報の金融商品取引所その他の内閣府令で定める者に対する伝達が、情報通信の技術を利用する方法であつて」、これはネットワークを通じて取引所への注文を行うということなので、この条件にもあてはまります。

「当該伝達に通常要する時間を短縮するための方法として内閣府令で定める方法を用いて行われるもの」、これがよくわかりません。
伝達に通常要する時間」が対面取引でかかる時間のことなのか、システム取引でかかる時間のことなのか、また「内閣府令で定める方法」の具体的内容が条文にはないため、APIを使うことによる取引も短縮にあたるのであれば対象となりますが、そうでない場合には当たりません。
ただ、対象なのに無許可で取引を行った場合は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその両方」(198条)の罰則があるため明確に理解しておかなければいけません。

この記述について詳しく調べてみたところ、大和総研のレポートが引っ掛かりました。 このレポート4ページによると、参議院委員会で金融庁総務企画局長による答弁が行われており、その内容が引用されていました。
ここでいう「時間を短縮するための方法として内閣府令で定める方法」は「コロケーションエリアからの発注など、判断に関する情報の伝達に要する時間を短縮するための方法を用いている」との定義のことらしいです。
この場合の「コローケーションエリア」というのは東証アローズのような東証のシステムに物理的に繋いだものですね。
ということを踏まえれば個人宅やVPSから証券会社のシステムを仲介して取引を行う分には問題なさそうです。

また、その後の答弁でどういった者が登録対象になるかについて、「新たに登録を義務付けられるいわゆる投資会社は六十社程度」「既に海外でも高速取引を行っている、基本的に海外の会社」具体的に述べられております(5ページ)。 個人投資家については全く触れられておらず、実際法律の施行後に登録された数は最大55で、登録されている法人はどこもマイクロ秒単位での取引を行うような法人でしたので*1、個人でスキャルピングを行う分には問題ないでしょう。

念のために、未登録者による立件、逮捕のニュースがないか調べてみましたが見つかりませんでした。

今年3月に高速取引で課徴金勧告が出された法人がありますが、記事を読んでみると高速取引というよりは終値関与での課徴金ではないでしょうか。*2 sp.m.jiji.com

ということで前例的にも問題なさそうなので、シストレのスキャを行うことによって法律に触れるようなことはなさそうです。

auカブコム証券の規制について

では、次にauカブコム証券ではスキャルピングは高頻度のアクセスは禁止かを見ていきたいと思います。

関連しそうな禁止事項には、オンライン・トレード取扱規定の第27条1に書かれていました。

27条 1.お客様が本サービスの利用に関し、次の各号に定める事項に該当する場合は、当社は本サービスのご利用をお断りすることがあります。
(1) 第31条各号に該当する場合
(2)お客様が第30条第1項の手続を行わない場合
(3)当社からの連絡がとれなくなった場合
(4)過大なアクセスを行うなど本サービスの濫用がなされていると当社が判断した場合
(5)各種法令および諸規則に抵触する場合又はその疑いが強いと当社が判断した場合
(6)当社が定める本サービスに関する指示等を遵守しない場合又はこれに違背する方法
で本サービスを利用した場合又は利用しようとする場合
(7)当社の認めていないプログラム、ソフトウェア等の使用により、当社のシステムの意図から外れた方法で本サービスを利用した場合又は利用しようとする場合
(8)その他、当社の運営方針に外れた態様で本サービスを利用するなどお客様が本サービスをご利用いただくことが不適当であると当社が判断した場合

auカブコム証券 オンライン・トレード取扱規定より

30条、31条はそれぞれ申込事項(書類)の提出、不足金に事項なので関係ないです。
この中で関連がありそうなのは、(4)と(7)でしょうか。

(4)について、明確なアクセス制限のボーダーがわからないブラウザからWebサーバーへのアクセスの場合は気をつけなければいけませんが、APIにはレート制限でしっかりとしたボーダーが決められており、その制限を超えるとリクエストを投げるとエラーが返ります。
レート制限エラーが出た直後もしつこくリクエストを投げたりしないように調整を行えば、違反として取引停止にさせられることはなさそうです。

また、(7)についてですが、APIを使用する分には公式から配布されているサンプルコードとリファレンスを基に利用する分には、まず問題ないと思いますね。
当社のシステムの意図から外れた方法、取得した板情報を外部に有料で流したりしない限りは大丈夫でしょう。

サーバーへの負荷については問題なさそうですが、手法としてスキャルピングは問題ないでしょうか?
FXを取り扱う会社ではスキャルピングを禁止しているところが多そうですが、日本株スキャルピングを禁止するような文言は見当たりませんでした。

Google検索の上位にヒットするサイトでは、証券会社はFXと違い株の仲介をするだけだから証券会社はリスクを負わない。だからスキャルピングを禁止にする必要がない、とかいうよくわからない記述をしているサイトが多いですが、そんなわけないんですよね。

証券会社は顧客から注文を受けた場合は東証のシステムに発注をかけに行きますが、注文をかけると東証から証券会社に対してアクセス料という名目の手数料が課され、約定すると取引料が課されます。この他、注文内容の変更や注文キャンセルでも手数料がかかります。
https://www.jpx.co.jp/rules-participants/participants/fees/tvdivq000000v276-att/fee(Japanese)20230601.pdf

例えば、auカブコム証券で1000円の株価のプライム銘柄を寄りから引けまで1分ごとに1単元(100株)売買する。その場合に1日で証券会社から東証に払わなくてはいけない費用は、

(1000<株価>x100<単元株数>x0.3/10000<取引手数料[標準料率]>x0.7<取引手数料[取引料率]※1>+0.09<アクセス料※2>)x2<往復分>x300<売買回数>=1314円

となります。

※1取引料率は月間売買代金によって変動。カブコムの公表しているデータによると毎月1兆円を超えているためこの料率に。
※2 アクセス料は月間注文件数によって変動だが、こちらはカブコムは公表していない。
東証の5月の売買代金115兆円を約定株数560億株で割ると1株平均2053円。カブコムの5月の売買代金3兆8700億で割ると、約定株数は19億3000万株ほどと推測できる。1注文あたりの平均取引株数は全く不明だが仮に100株~300株とおくと、月約定件数は1930~5790万件。松井証券の公表データを見ると注文件数は約定件数の1.7倍ほどなので、それを参考に計算すると、カブコムの月当たりの注文件数は3281~9873万件ほどと推測できる。これを東証のアクセス料金体系に当てはめると1注文当たり0.09円か0.07円のアクセス料がかかる。ここでは多めの0.09円としておく。

5年ほど前まではどの証券会社も顧客に対し取引手数料や金利貸株料をかけていたため、↑の東証への費用も賄えていましたが、競争激化で無料化が進んでいるためそういった状態で取引されると利益にならないどころか損失ですからね。
慈善事業でない以上、損失になってしまうような取引については今後禁止になる可能性は十分に考えられます。

ですので、ここら辺については今後も注視しながらトレード方法を注視していきたいですね。

次回は、やっと本題のスキャルピングの具体的なアルゴリズムについて考えていきたいと思います。

*1:正確には法人54、個人1ですが、この個人も調べてみるに投資会社っぽいです

*2:超低位株の終値関与は酷いですからね...。間違いなくアローズ勢の仕業なのですが、なかなか取り締まらないのは東証に大量の利用料を払っているからでしょうね。。詳しくは後日記事にします。